音楽とエクササイズの大規模フェス「LUSTER」ステージと参加者の様子=2024年4月19日、千葉市の幕張メッセ、朽木誠一郎撮影

 街中を歩いていると、ガラスの向こう側で汗を流す人たちの姿が目に留まる――。健康ブームを背景に社会に浸透したフィットネスクラブだ。そんな業界でいま、事業者の淘汰(とう・た)が急速に進んでいる。コロナ禍をきっかけに事業の見直しを迫られる中、手軽さの追求や、エンタメ化による熱心なファン層の形成など、活路を模索する動きが広がっている。

 東京・西新宿。ビルの1階部分のこぢんまりとした店舗に、次々とスーツ姿の若い男性が吸い込まれていく。そのうちの一人はスーツ姿のまま、胸筋を鍛えるトレーニングマシンに座った。一通り体を動かすと、軽く汗を拭き、10分ほどで店舗を後にした。

 「コンビニジム」をうたうフィットネスクラブ「チョコザップ」では、こうした光景が当たり前だ。月額2980円(税抜)という安価で、24時間いつでも利用できる。ただしスタッフは置かない無人営業。トレーニングウェアや運動シューズは不要で、私服でも気軽に運動できるのを売りにする。

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各地に急速に広がっているチョコザップの店舗(西新宿店)=東京都新宿区、ライザップグループ提供

 運営は、パーソナルトレーニング大手の「ライザップ」。コンセプトを変えた新事業として2022年夏のスタートから約2年で国内トップとなる会員数120万人に達した。テレビCMなどで劇的に体を変化させるイメージのついたライザップは近年業績が悪化していたが、チョコザップ事業の好調により、グループの24年3月期決算は5年ぶりの増収となった。

 同社広報は「フィットネスジムに熱心に通う人は日本ではまだ少なく、サービスの広がりに限界がある。そこで、大多数の運動初心者をターゲットにし、通いやすいサービスにしたことが支持された。今後は、チョコザップ→ライザップという接続をはかり、初心者から上級者までをシームレスにつなぎたい」と話す。

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各地に急速に広がっているチョコザップの店内(西新宿店)=東京都新宿区、ライザップグループ提供

 だが、フィットネス業界は苦境にある。東京商工リサーチによると、昨年度の「フィットネスクラブ」の倒産数は29件で、過去最多を記録した。同社によれば、コロナ禍でダメージを受けたクラブが多く、「淘汰が急速に進んでいる」という。

 苦境の原因は、コロナ禍だけ…

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