北海道砂川市の要請でヒグマをライフル銃で撃った猟友会の男性が、建物に向けて発砲したとの理由で銃の所持許可を取り消された。男性が処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が18日に札幌高裁である。市街地でもヒグマの目撃が相次ぐ中、裁判の影響は駆除現場にも及んでいる。
男性は、道猟友会砂川支部長の池上治男さん(75)。2018年8月、市職員からヒグマの駆除を依頼され、ライフル銃を1発撃ってヒグマに命中させた。
「善意での活動」としてクマ駆除を担う猟師たち。記事の後半では、池上さんや北海道猟友会長の懸念を伝えています。
だがその後、池上さんは、道警から銃刀法違反と鳥獣保護管理法違反の疑いで書類送検=不起訴処分=された。銃弾が到達する可能性のある場所に建物があったとして、道公安委員会から銃所持の許可を取り消された。
道を相手取った訴訟では、建物に銃弾が届く可能性や、道公安委の処分の違法性が争点となっている。
2021年の一審・札幌地裁判決は、ヒグマの背後に高さ約8㍍の土手があり、池上さんが発砲した位置から土手の上の建物はほぼ見えなかったと指摘。建物に銃弾が当たる可能性があったとする道側の主張は「極めて抽象的な危険をいうものに過ぎない」とした。
その上で、発砲時に池上さんが警察官から特段の制止を受けなかったことなども考慮すると、「取り消し処分は裁量権の乱用と言わざるを得ない」と結論づけた。
道側は、一審判決を不服として控訴。池上さんが斜面に沿って撃ち上げる角度で発砲したとし、建物とのあいだに遮蔽(しゃへい)物はなかったと主張する。一審判決が処分と関係のない事情を考慮し、公安委の裁量の範囲を狭く解釈したのは誤りだと訴えている。
札幌高裁は昨年9月、一審に続いて現場検証を実施し、裁判官が直接現場を確認した。(上保晃平)
「こんなことに巻き込まれるとは、思いもしなかった」。池上さんのハンター歴は40年以上。長年、砂川市の要請でヒグマを駆除してきた。
銃の所持許可を取り消され…