2012年11月、熊本県中学校駅伝競走大会。大津中学校(大津町)の最終走者はバレー部員だった。
身長は140センチほどに見えた。細身の男子だ。26チーム中18位でゴールし、区間順位も16位とパッとしたものではなかった。
だが、脚の動きは滑らかでバネがあった。内にも外にもぶれず、足裏がかかとからバランスよく着地し、スムーズに地面を蹴り出している。
「センスがある」
のちに五輪の切符をつかむ赤崎暁選手(26)に目を付けた指導者が、熊本市の開新高校で男子駅伝部の監督を務める木村龍聖さん(51)だ。熊本工業高、順天堂大の陸上競技部で主に中距離に取り組んできた。
大会後、木村さんは大津中へ連絡し、赤崎選手と保護者、担任教師と面談を行い、語りかけた。「君は、必ず強くなる」
熱心な誘いを受けて開新高校に入り、陸上競技を始めた赤崎選手は、ひざの成長痛に苦しめられた。
本格的に練習を始められたのは、2年の冬。迎えた3年の初夏、5千メートルで県大会を突破し、南九州大会へ進んだ。
センスだけじゃない 赤崎選手にあったもう一つの素質
「練習量が他校の選手よりも圧倒的に少なかったのに、競り合えた」。木村さんは手応えを感じた。
走りは、負けず嫌いでストイ…