ハンセン病の国立療養所「長島愛生園」(岡山県瀬戸内市)にある歴史館で18日、2003年の開館からの来館者が20万人を突破し、入所者代表から記念品が贈呈された。
この日、倫理学などを学ぶ京都大の大学生ら15人が訪れて、20万人を超えた。代表して4年生の黒田雄誠さんに、愛生園の山本典良園長から花束が渡され、入所者自治会長の中尾伸治さん(90)からも園内の窯でつくられた茶わんや入園者50年史などの本が贈られた。
中尾さんは「20万人もの人たちが勉強に来てくれたことをとてもうれしく思っている。(ハンセン病のことを)知らない人がたくさんいるので、そういう人たちに伝えてほしいなといつも思っている」と話した。
愛生園では、入所者78人の平均在園年数が63.6年となり、平均年齢も88.5歳(8月15日現在)と高齢化が進む。中尾さんは「私たち入所者の語り部もだんだんいなくなってきている」と述べ、歴史館の存在の大切さも説いた。
歴史館は03年夏に一部が開館し、翌04年春に全館オープンした。建物自体は1930年に竣工(しゅんこう)し、かつては療養所の事務管理棟として使われ、国の登録有形文化財でもある。
歴史館によると、2001年にハンセン病の国家賠償訴訟で国が控訴断念したことで開館当時は社会的な関心が高まり、入所者も自分たちの歩みを知ってもらいたいという機運が高まっていた。
来館者は14年度から年間1万人を超え、コロナ禍で一時大幅に落ち込んだものの、23年度から再び1万人を超えている。
館内ではハンセン病や国の政策、愛生園の歴史などが学べるほか、入所者が使った机や工具なども展示されている。
学芸員の説明を聞いた黒田さんは「どういう風に偏見がつくられてきたかといった歴史的な部分や、偏見を無くそうと努力がなされてきたことを知りました」と話した。
開館時間は午前9時半~午後4時。月曜休館。事前予約の問い合わせは(0869・25・2212〈内線541〉)へ。(北村浩貴)