今年のノーベル化学賞に選ばれた英グーグル・ディープマインド社は、ロンドンのスタートアップ企業が母体となって生命科学の研究に革命をもたらした。AI(人工知能)開発では、巨大テック企業を擁する米国と中国が主導権を握りつつあるが、英国も独自の戦略で存在感を示している。来日した国家技術顧問のデーブ・スミス博士に聞いた。
――ディープマインドの2人が今年のノーベル化学賞を受賞します。受け止めは。
非常に誇らしく思っています。CEO(最高経営責任者)のデミス・ハサビス氏はナイトの称号を授与されていますが、ノーベル賞も受賞するということで、ますます誇らしい。
- ゲームオタクが変えた生命科学 福岡伸一氏「ノーベル賞はAI祭り」
彼はケンブリッジ大でコンピューターサイエンスを学び、スタートアップの業界に入っていった人材です。そうした取り組みを英国政府は一貫して支援してきました。
大学での研究から起業して世の中にスピンオフ(派生)させていく。まさに私たちが得意とするところです。例えば、英国には合成生物学に関係する活動中のスタートアップ企業だけで1200社あります。その中で、最も成長が期待される10社のうち7社は大学から誕生したスピンオフ企業です。
――ノーベル賞にAI分野が選ばれたことについて、「英国にとってエキサイティングタイムだ」と講演で語っていました。なぜですか?
英国にとってAIは強みを発揮しやすい分野なのです。英国は世界3位の立場にいます。上にいるのは米国と中国だけ。私たちはあらゆる分野にAIを導入できると考えています。
AIはすべてを可能にする。あくまで構想ですが、そうとらえて非常に前向きにこの分野を支援しているところです。
米中以外の3カ国もAIで偉大な存在に
――AI開発では、巨大テック企業がひしめく米国が圧倒的です。中国も存在感を増しています。英国の戦略は?
米国と中国は資金力も人口も…