今年のノーベル物理学賞の受賞者が8日午後6時45分に発表される。注目分野の一つが「量子コンピューター」だ。実用化されれば社会を大きく変えると言われており、日本の研究者の貢献も評価されている。何が画期的なのか。研究はどこまで進んでいるのか。

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 量子コンピューターは電子や原子などミクロの世界で働く物理法則「量子力学」を使う。日常とはかけ離れた不思議な現象が起きる。

 その代表例の一つは、観測するまでは粒子の状態が確定しないという状態の「重ね合わせ」。もう一つは、互いに関係する二つの粒子は一方を観測すると、どんなに遠く離れていても同時にもう一方の状態が確定する「量子もつれ」だ。

 従来のコンピューターは「0」と「1」だけで様々な数を表現する2進法を使って計算する。計算単位を「ビット」と呼び、10ビットあれば10進数の0~1023までの1024通りの数字を表現できる。ただ、一度に取ることができる値は一つだけだ。

富士通と理化学研究所が共同開発した国産量子コンピューターの2号機=埼玉県和光市

 だが、「0でもあり、1でもある」という量子ビットが10あれば、0~1023の値を一度に取れる。

 例えば0~1023に5のかけ算をする場合、従来のコンピューターでは1024回計算する必要があったものが、量子コンピューターでは1回で済むことになる。世界最速のスーパーコンピューターでも数万年から数億年かかる計算が、数分でできると考えられている。

 2022年のノーベル物理学賞は、量子論の証明に貢献した3人が受賞した。今後は、量子論を社会で役立てる研究の受賞が期待されている。

 横浜国立大の小坂英男教授(量子情報物理学)は「量子コンピューターは、アイデア自体は古くからあったが、実現は難しいと考えられていた。変化をもたらしたのは、中村さんらの研究だ」と語る。

 NECの研究員だった中村泰…

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