発動が4日に迫ったメキシコとカナダに対する関税を、トランプ米大統領が土壇場で「1カ月猶予する」と打ち出した。両国が提案した国境対策を一定評価し、「見返り」を与えた形だ。高関税を材料に相手国から譲歩を引き出す「ディール(取引)外交」は第1次トランプ政権時代からの常套(じょうとう)手段だが、その手法の変化もみてとれる。
- トランプ氏、高関税発動の1カ月延期を表明 メキシコ・カナダと合意
トランプ氏が不法移民や合成麻薬フェンタニルの流入を理由に、メキシコとカナダに25%の関税を課す大統領令に署名したのは1日。国家の緊急事態の際に、関税などに関する広範な権限を大統領に与える国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠にした。
それからわずか2日後の3日朝。トランプ氏はメキシコのシェインバウム大統領と協議し、メキシコ側が1万人の兵士を国境に派遣し、移民や麻薬の流入阻止に動くと約束したことを評価。見返りとして、関税の実行を1カ月間猶予すると表明した。同日夕には、カナダのトルドー首相もトランプ氏との協議を経て、SNS上で「30日猶予」になると報告した。
ディール外交、振り回される各国
こうした経緯から思い起こされるのは第1次トランプ政権下の2019年のケースだ。
この年の5月30日、トラン…