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2030 SDGsで変える

 SDGs(持続可能な開発目標)の達成期限は2030年ですが、児童労働の撤廃(目標8.7)は特に重要なことから25年が目標年です。児童労働は、日本に輸入されるカカオ豆の7割以上を生産する西アフリカのガーナでも大きな問題です。JICA(国際協力機構)が日本のカカオ関係者向けに企画したツアーに同行し、子どもたちを保護する取り組みを取材しました。(編集委員・北郷美由紀)

給食や学用品を支援 出席数が倍に

 ガーナ第2の都市で交通の要所として知られるクマシから車で2時間半。アハフォ州南部の村の小学校では、23年10月から児童の出席数が倍近く増えた。日本のNPO・ACE(エース)が現地のNGOと進めるプロジェクトで、給食や学用品の支援を実現したからだ。

 5年生のブライトさんは以前は週に3日だけ学校に来て、あとは家のカカオ農園で手伝いをしていた。プロジェクトと連携する地域の「子ども保護委員会」のメンバーが教育の重要性を両親に説き、制服や運動靴も支給されたことから、今は毎日通う。はにかみながら、将来の夢は警察官になることだと教えてくれた。

 その様子を隣で見ていた母親のリディアさんは、「息子は自信を持てるようになった」と笑った。今では弟も学校に毎日通わせているという。

背景に農家の貧しさ 気候変動の影響も

 けれども収入源のカカオ栽培の話になると、リディアさんは表情を曇らせた。降雨のパターンが変わり、必要な時に雨が降らず、降っては困る時期に大量に降る。3年前から収量が落ち込み、肥料や農薬を買えないという。

 ガーナのカカオ生産には77万人の児童が従事しているとの調査があり、その多くは貧しさに起因する。豆は政府機関が買い上げるものの、国際価格はロンドンの先物市場で決まる。近年は気候変動の影響も大きい。国全体が資金不足で老木の切り替えも進まず、農家の生活は苦しいままだ。

 09年からガーナで活動し、2郡10村で622人の就学を実現してきたACEが「点での取り組みを面に広げて解決を急ぐ」(白木朋子副代表)ために目指したのが、仕組みづくりだ。デロイトトーマツコンサルティングと共に児童労働をなくす体制と対策を整備した地域を児童労働フリーゾーン(CLFZ)と認定することを提案。ガーナ政府の政策に採用され、ガイドラインが作られた。

■児童労働フリーゾーンづくり…

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