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小久保監督(右)と倉野投手コーチ

 9月20日、本拠でのオリックス戦で、先発の有原航平がリーグ最多タイの13勝目を挙げた。ソフトバンクの先発陣が手にした今季59個目の白星だった。

 昨秋の就任時、小久保裕紀監督は「投手陣、特に先発陣の立て直し」を課題に掲げた。そのために、過去2年は米マイナーリーグで指導した倉野信次投手コーチを呼び戻した。

 ともに青学大出身で、監督が3学年上。プロでも同僚として過ごした。

 かつて、多くの投手の球速を大幅にアップさせた倉野コーチの手腕は、ファンの間で「魔改造」と呼ばれた。

 小久保監督は一昨年、昨年と2軍監督を務めた。1軍に戦力を供給する立場から、「(先発陣の)やり繰りが苦しいのは伝わってきた」。

 リーグ3位に終わった昨季、チーム防御率は同4位の3・27。リリーフ陣だけで見ると2・68で1位だったが、先発陣は5位の3・63に沈んだ。

 倉野コーチは、優勝するために「先発陣で60勝」を目安とし、先発陣の再編に着手した。昨季の先発陣は46勝。3連覇したオリックスは61勝だった。

 昨秋から各投手と面談を重ね、8年目のモイネロ、2年目の大津を救援から先発に配置転換した。

 2人とも球種が多く、ほぼすべての球でカウントを稼ぐことができて、決め球にも使える。長いイニングのほうが生きると判断した。

 モイネロは11勝を挙げ、防御率1・94はリーグトップ。開幕投手の有原との2枚看板を形成した。大津も6勝。転向組の2人が先発陣を底上げした。

 長いシーズンを乗り切るべく、倉野コーチが描いたシナリオはこうだった。

 「シーズン前半、できれば3…

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