【動画】信号の点滅まで知らせる歩行者用信号認識アプリ「Oko」=佐藤慈子撮影

視覚障害者用の信号認識アプリ「Oko(オコ)」を使う品川博之さん=2024年7月18日午後、大阪市北区、筋野健太撮影

 視覚障害の人にとって、街を歩くときに最も危険で難しいのは、横断歩道と言われる。走る車の方向や信号機から流れる音で青か赤かを判断するが、大半の信号は夜間と早朝には無音になる。信号の音や音楽が周辺住民にとって「騒音」になるからという。電気自動車(EV)だと走行音も聞こえにくい。光も音もない世界でどうやって安全に歩くかが切実な課題となっている。

 大阪府柏原市に住む品川博之さん(54)は12歳のころ、強度の弱視から全盲になった。大学で英文学を点字で学び、いまは大阪市中央区の企業内でマッサージ師として働いている。白い杖を頼りに私鉄と地下鉄を乗り継いで通勤する。パソコンやスマホの読み上げ機能を使い、メールのやりとりもこなす。

 視覚障害者の情報交換サイトでベルギーの若手起業家が信号機を読み取るアプリを開発していることを知ったのは、2021年の12月ごろだった。スマホのカメラを進行方向の信号に向けると、AI(人工知能)と画像分析で信号が赤か青かを見極め、音声で伝えてくれる。そんなアプリ「Oko(オコ)」(東欧圏の言語で「目」の意味)の試作版を視覚障害のある人に実際に使ってほしいという依頼が舞い込んだ。

 「目の代わりになるアプリはいくつかあるが、信号識別に特化したアプリはなかった。単純だけど、これは便利だなと」

 英語が得意な品川さんはアプ…

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