
三重県松阪市飯高町波瀬(はぜ)地区で3月23日、移住者らによるスイーツ・イベントが開かれる。「移住者同士の体験を分かち合い、地元との交流機会にも」と、地区に住んで3年余になるミュージシャンの大島圭太さん(51)が中心に企画した。
波瀬地区は1千メートル級の山々に囲まれ、奈良県境と接する松阪市最西部にある。1956年に飯高町(現松阪市)に新設合併した旧波瀬村は約2700人の人口があったが、今の住民は約380人。地区の波瀬小学校は2008年に休校になったが、紅葉で知られる泰運寺や波瀬植物園、陶芸空間「虹の泉」などがある。
大島さんは大阪府岸和田市出身。大学進学を機に名古屋市に住み、05年愛知万博(愛・地球博)ではサポートソングの作詞も手がけた。ギターの弾き語りでロックを奏でながら全国を回り、15年ほど前に、妻の実家に近い金沢市に移ったが、「いつか広大な土地や自然と暮らしたい」と考えていた。
コロナ禍でライブ演奏の機会が減った21年秋、松阪市の空き家バンクで見つけた波瀬地区の古民家に妻と移住した。県内外からアーティストを集め、夏には敷地内の広場で音楽祭を開いたが、さらに地区内の広い土地と空き家を紹介され、23年秋に引っ越した。
「THE BIG愛LAND」と名づけた新拠点は、松阪市飯高町栃谷の山すそにあり、敷地は約1万3千平方メートル。築約100年の古民家は、1、2階合わせて8部屋があり、2年前まで高齢女性が暮らしていたため、傷みが比較的少なかった。
月2万円の家賃で暮らしながら、ゲストハウス開業の準備を進めている。1階居間は地域住民らの「たまり場」として開放し、夏の音楽祭も敷地内で開催した。「人の集まれる場を作りたかった。山の中なので、音楽を奏でても苦情が来ることはない」と大島さん。
スイーツ・イベントは、自然食材でスイーツ作りを始めた移住者仲間を励まそうと、23年春に始めた。口コミで住民ら約100人が来てくれ、運営を手伝ったり、農産物の店を出したりしてくれる人もいた。
今年は3回目。イベント名は「ナチュラル・スイーツ・カーニバル from 波瀬」と決めた。地元のほか津市や鈴鹿市、多気町などでスイーツ店を営む移住者らの9店が出る予定。音楽ライブもあり、大島さんのほか、神巫(かんなぎ)リエルさんら県内のミュージシャンが出演する。
大島さんは今年も7月に「THE BIG愛LAND」で音楽祭を開く準備を進めている。「おいしい空気と土にふれれば元気になれる。ぎすぎすした都会に疲れた人は、ぜひ訪ねてほしい。自分もここに骨をうずめるつもりです」
「ナチュラル・スイーツ・カーニバル」は、3月23日午前11時~午後4時、松阪市飯高町波瀬の「cafe de HAZERU」と周辺で。入場自由だが、カンパを募っている。問い合わせは大島さん(070・8438・5849)へ。