モーリタニアの民族衣装をまとい、東京電機大学高等学校の生徒約750人に講演。夢をかなえるための工夫や、好きなことを仕事にする喜びを語った=東京都小金井市、外山俊樹撮影

昆虫学者・前野ウルド浩太郎さん

 突然大発生して農作物を食い荒らす「蝗害(こうがい)」。その歴史は古く、旧約聖書にも記されます。しかし、21世紀になっても発生のメカニズムはよくわからず、空中を飛び交う群れを追って農薬を散布するにも限界が……。各国の精鋭たちがテクノロジーを駆使して研究する中、昆虫学者の前野ウルド浩太郎さん(44)はサハラ砂漠に野宿して調査する、世界でも珍しいバッタ博士の一人です。昼間は気温40度を超す悪路を、信頼する相棒の運転で大群を追いかけ、採取したら自ら考案した道具を使ってデータを収集。地雷原に阻まれ、サソリに刺され、300キロ走って捕獲5匹という逆境だらけですが、笑いを交えながら学術的に新書につづり、累計33万部のベストセラー作家でもあります。

 ――現在は国際農林水産業研究センター(国際農研)主任研究員。しかし12年前には一時期、ほぼ無収入になったとか。

 はい。憧れの昆虫学者にはなれないのかと絶望しかけました。当時は日本政府の派遣で、西アフリカで「サバクトビバッタ」の生態を探っていたんです。任期の2年が迫るが、ポスドク(博士研究員)で就職先も見つかっていませんでした。

 この道を目指したのは小学生…

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