患者の手を握って話を聞く医師。病棟には家族も入れず、防護服を着た医師や病棟の患者らが数少ない話し相手となる=2024年9月29日、キンシャサ、今泉奏撮影

 2歳半の女の子は布にくるまれ、震えていた。発疹は頭からつま先まで、からだじゅうに広がる。細い腕からは点滴用のチューブが伸びていた。9月末、アフリカ中部コンゴ民主共和国の首都キンシャサの病院で、感染が拡大するエムポックス(サル痘)患者の病棟を取材した。

 不織布の防護服をまとい、二重にゴム手袋をして念入りに消毒する。気温は30度を超え、防護服の中では、サウナに入っているかのように汗が噴き出す。取材では、案内してくれたクマクマ・ノリス医師(34)の指示に従って安全対策をとったが、「感染を防ぐため、病室では何にも触れないでください」と念押しされた。

 新型コロナウイルスと異なり、エムポックスは主に体液や血液に触れることで感染する。短時間の飛沫(ひまつ)感染の可能性は低いとされる。だが、重症化や死亡の事例が相次いでおり、リスクを最小限にするためにも感染対策の徹底は欠かせない。

エムポックスの病棟を担当するクマクマ・ノリス医師=2024年9月25日、キンシャサ、今泉奏撮影

 病室にエアコンはない。薄いマットを敷いたベッドの片隅に、2歳半のビュティ・ヤマちゃんは横たわっていた。母親のンテナ・ナオミさん(25)によると、約3週間前にのどの痛みを訴え、高熱にうなされ始めた。

 病院に駆け込み、注射を打った。だが、症状は治まらず、発疹が広がった。「ママ、体が痛いよ」と訴える声は次第に弱々しくなった。もだえて苦しみ、やがて泣くこともできなくなった。

 幸い、危険な状態は脱し、快方に向かっているという。ナオミさんは「回復できたのはめぐまれていたと思う。周りには、病院に来られずに亡くなる人たちもいる」と話した。

子どもに広がる感染 日本に高まる期待

エムポックスに感染した2歳半の女の子。地元の布「キテンゲ」にくるまれて震えていた=2024年9月25日、キンシャサ、今泉奏撮影

 キンシャサでは別の病院も訪…

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