インタビュー連載「電ゲン論」
「脱炭素社会」の実現が叫ばれるいま、あらためて「電気」をどうつくるべきなのかが問われています。原発の賛否をはじめ、議論は百出しています。各界の著名人にインタビューし、さまざまな立場から語ってもらいました。
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻すると、ロシア産原油の禁輸が議論され、エネルギー価格は急騰しました。世界各国はエネルギー確保に奔走し、日本でもエネルギー安全保障が大きな議論となりました。岸田政権はエネルギーの安定供給のため、原発を「最大限活用する」方針を決め、東日本大震災以降、原発の活用に慎重だった政府の姿勢が大きく変換する契機となりました。
政府は2023年2月に閣議決定した「GX(グリーン・トランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」で、原子力を「最大限活用する」とし、原発回帰を鮮明にしました。国のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」で定められた「原発の依存度を可能な限り低減する」との方針を覆すものです。政府は電力の安定供給のためと説明しますが、エネルギー政策に詳しい高橋洋・法大教授は、再生可能エネルギーの方がふさわしいと言います。その理由を解説してもらいました。
――日本はもっと太陽光や風力発電など再生エネ由来の電源を増やすべきだと主張されています。
「政府が現在検討している2040年ごろの電源構成について言えば、約80%は再生エネでまかなうことができるはずです。残りは火力発電と原発ですが、天然ガスによる火力発電を急に減らすのは難しいため、40年ごろでも15%程度は残る。原発は、新増設が現実的ではないので、多くても現状程度の約5%でしょう」
――政府は脱炭素電源だとして原発の再稼働を進め、建て替えや新増設も積極的です。それでも割合は増えませんか。
「原発の新増設はコスト面から極めて困難です。『次世代革新炉』の一つである欧州加圧水型炉(EPR)は、1基あたり1兆円超かかるという実績もあります。建設期間が長期間に及ぶため、投資への不確実性も高い」
――高コストにもかかわらず、政府はなぜ原発を最大限活用したいのでしょうか。
「ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、エネルギー危機が起きたことが理由とされています。それは『化石燃料の危機』であり、確かに価格が高騰しました。だから、脱炭素電源でもある原発の復活ということのようですが、エネルギー安全保障を重視するなら、純国産の再生エネこそ強化すべきです」
「ウクライナ侵攻の前年の2…