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民主党大統領候補のカマラ・ハリス現副大統領。記事に出てくる、全米黒人ジャーナリスト協会とのディスカッションの際の一コマ=ニューヨーク・タイムズ

Harris Has a Lot of Strengths. Giving Interviews Isn’t One of Them.

 9月25日夜、カマラ・ハリス副大統領は民主党の大統領候補として、大手ケーブルテレビの初の単独インタビューに応じた。冒頭で投げかけられたのは、ハリス氏の経済政策が自分にどのようなメリットをもたらすのかが分からないと感じている米国人に、どう説明するか、という仮定の穏やかな質問だった。

 ハリス氏は「そうですね」と切り出し、軽く頭を振りながら、「私が確信している通り、みなさんが勤勉で夢や野心、希望を持っているのであれば、私の政策はみなさんのためのもの」と語った。

 彼女は少し間を置き、ほほ笑んでいた。

 「お伝えしたいのは」と軽く目を細め、手を挙げ、「私は米国の人々の精神と国民性を本当に愛しており、そこから大きな活力を得ているということだ」と続けた。

 めまぐるしい勢いで民主党の大統領候補に駆け上がる中、ハリス氏は規律正しく、議論にも秀でており、選挙集会では機敏でエネルギッシュな言動を見せて、疲れを知らない候補者であることを証明している。しかし、ジャーナリストとの一対一の[one-on-one]テレビインタビューは、彼女の政治的資産の中で長らく弱点だった。専門用語[jargon]やリハーサル済みの言い回しに頼ることがよくあり、ゆっくりと回り道をしながら質問に対する答えにたどり着く。そうした言葉遣いは時に「言葉のサラダ[word salad]」(訳注:脈絡のない言葉の羅列)と嘲笑されるが、むしろ、「メレンゲ[meringue]」と表現する方が適当かもしれない(訳注:きめ細かく軟らかいが芯がない、という意味)。

計算もあるけれど

 大統領候補として、ハリス氏はそのような(ジャーナリストとの一対一の)インタビューをほとんど避けてきた。ゴールデンタイムに注目を浴びるリスクを取るより、著名人とともに開くタウンホールミーティングや地元テレビ局のスポット広告、作り込んだ動画、SNSを通じて獲得したい有権者にアピールし、そこからより多くの支持を得るという、同氏の選挙陣営の計算がそこにはある。

 しかし、インタビューを避ける背景には、より深い要因があるようだ。ハリス氏はインタビュアーと向き合った瞬間から明らかに緊張し、まるで証人席に座って敵対的な反対尋問に身構えるような様子を見せる。

  • 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」

メディアのインタビューを避けていることで、政敵の批判を浴びるハリス氏。月並みな表現ばかり使う、とも指摘されています。一方、対立候補のトランプ氏はと言えば、乱暴な発言をしても、ハリス氏ほどは細かいチェックは受けない。不均衡が生じている、とNYTは報じます。

 ハリス氏は検察官や上院司法…

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