アンゼルム・キーファー展の会場

 荒々しい大画面に、ワラや古着を貼り付けた作風で知られ、ドイツを、いや現代美術を代表するといってよいアンゼルム・キーファー(79)の日本では26年ぶりの個展だ。1993年に東京などで大個展があり、国内の美術館が作品を所蔵しているとはいえ、欧州の神話や宗教、歴史を背景に持つ表現は極東の鑑賞者には難解なはずだ。なのに多くの人を引きつけてきた。

 今回は、ガラスケースに入った立体作品15点と、水彩画5点による構成だが、会場に足を踏み入れ、たじろいでしまう。ケースに入っているのは、鉛の本や灰、古着、斧(おの)などで、いずれもさびたり朽ちたりと、濃密な物質性と記憶を宿している。

 ケースでの展示は師のヨーゼフ・ボイス譲りだが、ボイスが日常的なモノを置いたのに対し、キーファーはより物語的、寓意(ぐうい)的。ケースじたいも、どこか古びている。

 各ケースでは、ギリシャ神話…

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