アジアゾウ4頭が30日、ミャンマーから空路と陸路で28時間かけて、福岡市動物園(福岡市中央区)に到着した。2017年にゾウが死んでゾウ不在となり、「ゾウさんが見たい」との子どもらの声が届いていた同園にとって「何ものにも代えがたい動物」(担当者)だ。ただ、近年は動物福祉の観点が高まっており、施設の環境整備やゾウの健康を意識した輸送には計20億円がかかった。アジアゾウをめぐるお金事情を取材した。
福岡市が運営する同園では、1953年以来ゾウを飼い続けていたが、2017年に最後の1頭が死んだ。空のゾウ舎を見て寂しがる子どもらは多かったといい、市は政変前からミャンマー国内の動物園と動物交流の覚書を結んでいた。
アジアゾウは国際自然保護連合のレッドリストで絶滅危惧種に分類され、ワシントン条約では商業目的の取引が禁止されている。園は今回、現地の動物園を管轄するミャンマーの省庁と金銭の支払いではなく、ゾウ4頭と、動物用の医療機器6台やライオン2頭、カンガルー10頭、ダチョウ10頭との交換で合意した。
近年は動物福祉への関心も高まっており、日本動物園水族館協会(JAZA)は2017年、ゾウは社会性の強い動物だとして「複数頭の飼育が肝要」との声明を発表。21年には、①屋外運動場は1頭あたり最低500平方メートル②屋内は13度以下にしない③子ゾウや病弱個体には温度が5度以上になるよう屋外に暖房を設置する④全てのゾウが利用できる広さのプールを設置する⑤オスを含むすべてのゾウがコミュニケーションをもてるようにする――などのゾウが快適で健康的に生活できる設計を促すガイドラインを示した。
園では、こうしたガイドライ…