千里もぐら新聞を手にする辰巳雄基さん=2024年4月18日、大阪府豊中市曽根東町3丁目、岡田真実撮影

 1962年にまちびらきをした千里ニュータウン。いま、よそ者視点での魅力の発掘が始まっている。

 アーティストの辰巳雄基さん(33)のもとに、大阪府豊中市の市立文化芸術センターから話があったのは、去年の春のこと。「地域の人を巻き込みながら、アートを通じてまちの魅力を伝える企画をお願いしたい」という依頼だった。

 辰巳さんは、飲食店の客が箸袋を折って作ったものに目を付け、「ジャパニーズ・チップ」と名付けて全国で集めたことで知られる。

聞いた昔話は「新鮮」

 依頼は受けたが、豊中市とは縁もゆかりもない。さて、どうするか。まずは商店街や資料館を手当たり次第に回り、話を聞いた。

 豊中市と吹田市にまたがる千里ニュータウンも初めて訪れた。

 古びた府営や日本住宅公団(現UR都市機構)の集合住宅が高層に建て替えられ、空いた敷地には民間のマンションが建っていく。そこに子育て世代が引っ越してくる。「変化のまっただ中にある」と興味を抱いた。

 聞いた昔話は新鮮だった。

 辰巳さんが生まれ育ったのは奈良市、住んでいるのは京都府亀岡市。いずれも歴史は古く、まちの始まりは誰も知らない。だが、60年ほど前にまちびらきした千里は違った。「まちの始まりを知っている人が、まだいる。昔の姿が消えてしまう前に話を聞いて残したい」と思った。

伝説の「いねいねおじさん」

 昨秋、昔話を伝えるプロジェクトを発足させた。2年計画で、2023年度は公募で集まった18歳から70代までの調査員約20人とともに、千里ニュータウンに暮らしている人や、過去に住んでいた人たちへの聞き取りを進めた。

 「ニュータウンの建物は背が…

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