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足湯につかる中野一行さん=本人提供
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 「広島に温泉なんてありましたっけ」。そんなことを言われると、悔しくて仕方がない。

 広島市西区の中野一行さん(47)は、フリーカメラマンと温泉マニアの二つの顔を持つ。カメラを片手に、中四国地方の源泉かけ流し温泉を巡る。つかった温泉の数は500超。100回以上入り続けている温泉もある。

 宮城県塩釜市出身。幼い頃、布団屋を営む父と温泉に行くのが楽しみだった。家にはない大きな浴槽。風呂上がりのなめらかな肌。温泉のとりこになった。

 高校卒業後、写真の専門学校に入学。年を重ねるにつれ、温泉から足が遠のき、カメラに没頭した。

 転機は、結婚して広島で暮らし始めて5年目の2004年。長野県の温泉で、入浴剤を使っていたことが明るみとなり、各地で温泉偽装問題が噴出した。「そもそも温泉とは何なのか」。眠っていた温泉への思いが、わき上がった。

 温泉巡りを始め、勉強も始めた。温泉の正しい知識をもって正しい利用方法を広めるための資格「温泉ソムリエ」の認定を受けた。全国で現在約70人が認定されている二つ星の「温泉ソムリエアンバサダー」の一人でもある。

 湯につかるだけでなく、その魅力を写真で発信し続けている。18年には、中四国62カ所の温泉を取り上げた本「中国・四国かけ流し温泉ガイド&メモ」を出版した。地元の人に、地元の温泉の良さを知ってもらいたいという思いがある。

 おすすめの温泉の一つは、島根県大田市の三瓶温泉「国民宿舎さんべ荘」。体温に近い水温のため、長時間入っていられるという。最大の魅力は、露天風呂の上に広がる星空。午後9時半を過ぎると駐車場の外灯などが消える。「温泉につかりながら、満天の星が楽しめる。人生の中でも上位に入る感動経験でした」

 今年の夏、広島県内の冷たい温泉6カ所を巡るキャンペーン「広島夏温泉大使」を企画した。温泉は、心の洗濯ができる場所。「ぜひ県内の温泉で心身ともに洗濯して」

 妻と20代の娘との家族旅行の行き先も温泉地。これからの季節におすすめの広島県内の温泉は、広島県呉市の老舗銭湯「鶴乃湯」。蒸気サウナも源泉を使用しており、冷たい冷鉱泉かけ流しの浴槽もある。サウナと水風呂に交互に入るのがおすすめという。(遠藤花)

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