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宣伝から評論、監督まで映画業界でマルチな才能を見せた水野晴郎。警察マニアとしても知られた=1982年
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 「いやぁ、映画って本当にいいもんですね」。テレビの映画解説の名文句で知られた映画評論家、水野晴郎(1931~2008)。映画に携わるという夢をかなえるまでは、苦難の連続だった。

中国地方からは、日本映画を代表する監督、俳優らが多数輩出しています。その映画人たちは戦争とどう向き合ったのか。戦後80年を機に紹介します。

 子どものころから米国映画が大好きだった水野は、米国の映画会社・20世紀フォックス映画のアルバイトから、映画人としてのキャリアをスタートさせる。後に日本ユナイト映画にヘッドハンティングされ、ダスティン・ホフマン主演の「卒業」や「007」シリーズの宣伝を担当した。

 独立後、1972年から日本テレビ系の映画番組の解説を担当、人気を博した。冒頭の名文句は、西部劇映画「シェーン」放送の際、感動のあまり自然に出てきた言葉だという。

 映画配給会社も設立。これまで日本では上映されなかった名作の公開に力を注いだ。さらに自らメガホンをとり、「シベリア超特急」シリーズを世に送り出した。

 まさに映画づくしの人生だったが、糧となったのは前半生の壮絶な体験だった。

 水野は岡山県高梁市出身だが…

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