鳴尾浜球場での最後の公式戦後、「終球式」で投球をする元阪神のエース井川慶さん

 プロ野球阪神の2軍の本拠・鳴尾浜球場(兵庫県西宮市)で、30年の歴史に幕を下ろす最後の公式戦、ウエスタン・リーグ、阪神―ソフトバンクが25日、行われた。

 試合は阪神が6―14で大敗。最後の試合を勝利で飾れなかったが、球団の元エース・井川慶さん(45)が「終球式」として登場した。

 現役時代と同じ背番号「29」のユニホームに身を包み、マウンドへ。ノーバウンドで力強いボールを投げ込むと、スタンドから拍手が起こった。

 「育ててもらった場所。マウンドからの景色がなつかしかったし、苦しかった練習を思い出した。技術よりも気持ちを鍛えてもらった。ここから甲子園のマウンドをめざしてがんばったなあと」

 井川さんといえば、グラウンドに隣接する選手寮「虎風荘」に6年も住んでいたことで有名だ。

 自由を求めて早く退寮したがる選手が多い中、テレビゲーム好きで衣食住にあまり興味がなかった井川さんは「食事もおいしいし、快適だったので」。8畳一間の部屋を気に入り、高卒1年目から20勝を挙げた24歳のシーズンまで住んでいた。

 1億円プレーヤーとなり、追い出されるような形で退寮した。この日、大役を終えると、球場脇の駐車場から寮を指さして言った。「ほら、あそこの部屋です。覚えていますよ」となつかしんだ。

 鳴尾浜球場は1994年に開場。手狭になったことなどから、グラウンドや寮のほか、室内練習場なども含めた2軍施設は来年3月に同県尼崎市の「ゼロカーボンベースボールパーク」に移転する。

 和田豊2軍監督(62)はファンに向けたスピーチで、「鳴尾浜球場は30年の歴史に幕を閉じますが、選手たちはこの球場で流した汗を決して忘れることはないでしょう。ありがとうございました」とあいさつ。

 続けて、「来年から選手たちは、尼崎から甲子園を、1軍をめざします。新球場にもぜひ足を運んでいただき、選手たちを叱咤(しった)激励、応援していただければと思っております」と呼びかけた。(山口裕起)

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