くまモンがデビューして今年で15周年になる。ゆるキャラの中でも圧倒的な存在で、その名は国内のみならず海外にも知られている。どうしてここまで育ったのか。熊本県で「くまモン担当課長」を務め、今は尚絅(しょうけい)大学(熊本市中央区)で「くまモン学」を研究する柳田紀代子・現代文化学部長に振り返ってもらった。

  • くまモン、忙しすぎて東京にオフィス開設 くじけない心、支えた手紙
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くまモンスクエアでは間近にくまモンを見ることができる=2025年1月16日午後2時13分、熊本市中央区手取本町

 県職員だった私が4代目の「くまもとブランド推進課長」、通称くまモン担当課長になったのは2016年4月。その半月後に熊本地震が起きました。

 あまりの被害の大きさに、「ゆるキャラどころじゃない。もう、出番は無いな」とあきらめました。ところが、それは大きな見込み違いだったのです。

 「くまモン、大丈夫?」「ケガしてない?」。そんな言葉やイラストが書かれたはがきが県庁に何通も寄せられました。

 くまモンは九州新幹線の全線開通を記念して生まれたキャラクターです。全線開通の日である2011年3月12日から活動を本格化するはずでした。前日に東日本大震災が起き、ほとんどの予定はキャンセルになりましたが、その後、地震や豪雨などの被災地を激励に訪れては歓迎されるという経験がありました。

 デビューから5年。「熊本県民を支え、県民一丸となって苦難を乗り越える存在になるのでは」と私たちは考えました。

 デザインした水野学さんから、ハートを抱いた姿と、フランスの画家ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」をモチーフに旗を掲げて前に進む姿のイラストをいただきました。

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熊本地震の後でデザインされた。旗を掲げ前進している ©2010 熊本県くまモン
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マスク姿のくまモン。コロナ禍を受けてデザインされた ©2010 熊本県くまモン

 地震後3週間で活動を再開したのですが、私には忘れられない光景がいくつかあります。

 お年寄りがくまモンに手を合…

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