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米デューク大ロースクール教授のニタ・ファラハニーさん=スイス・ダボス、宮地ゆう撮影
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 体に取りつけた機器で脳波や筋肉からの電気信号を読み取り、人間の感情や思考、疲労度などを検知する「神経技術(ニューロテクノロジー)」が広がりつつある。障がいのある人には画期的だが、内心まで読み取られる可能性もあるという。当然と思われてきた「内心の自由」が脅かされたとき、何が起きるのか。脳の中を守るにはどうすればいいのか。この問題の第一人者で、朝日地球会議にも動画出演する米デューク大学教授のニタ・ファラハニーさんに聞いた。

朝日地球会議2024

ニタ・ファラハニーさんへのインタビュー動画を「朝日地球会議2024」で配信します。

 ――ニューロテクノロジー(ニューロテック)とは、どのようなものですか。

 「ニューロテックと聞くと、脳に埋め込むようなものを思い浮かべるかもしれません。最も先端的な埋め込み型は、脳から出る信号を読み取り、考えるだけでパソコンのマウスを操作したり義肢とつないだりできます。ただ、こうした埋め込み型はまだ臨床試験の段階です」

 「私たち大多数に影響を与える可能性が最も高いのは、ウェアラブル(装着型)のニューロテックです。イヤホンや腕時計のようなデバイスに脳センサーを組み込むことで、脳の状態を追跡したり、VR(仮想現実)の機器とやりとりしたりできます。すでに装着型は世界で多く販売されており、来年にも、大手IT企業がこぞってイヤホンやヘッドホン型の多機能デバイスを発売するとみられます」

 「音楽を聴きながら、脳の活動を追跡したり、脳の信号を通じてデバイスを利用したりできるようになると予想されます。従来のスマートウォッチのように心拍数計などのセンサーを埋め込むだけでなく、脳の信号を直接、または脳から腕に伝わった信号を手首で検出して、(スマホの)画面をスワイプしたり入力したりする意図を読み取る技術にまで進化しています」

 「メタ社は、手首で脳の信号を拾える筋電位センサーを搭載した多機能ウォッチを、近く発売予定だと発表しています。これからの1、2年で、大手IT企業は脳センサーを搭載した製品を発売することが一般的になるでしょう」

 ――すでに広く使われているものもあるようですね。

 「従業員らの帽子やヘルメッ…

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