若年層を中心に市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)が増えている。背景には何があるのか、必要な対策や支援は。

 Q 市販薬のオーバードーズとは?

 A 医薬品は大きく分けて2種類ある。医師の処方箋(せん)が必要な医療用医薬品(処方薬)と、処方箋などがなくてもドラッグストアなどで購入できる一般用医薬品(市販薬)だ。

 薬は「1回1錠、1日3回」など用量や用法が決まっているが、これを守らずに大量に摂取することを「オーバードーズ(OD)」と呼ぶ。ふわふわとした気分になったり、気を失ったりして、命に関わることもある。

 Q 若者の間で増えている?

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 A 国立精神・神経医療研究センターの2021年の調査によると、高校生で過去1年以内に市販薬の乱用経験があるのは、約1.6%と推計される。

 また、乱用される薬物に占める市販薬の割合が増えている。同センターが22年に全国の有床精神科医療施設に行った調査では、薬物関連で通院などした患者が1年以内に使った主な薬物は、「覚醒剤」が28・2%、「睡眠薬・抗不安薬」が28・7%、「市販薬」が20%。14年の調査に比べ、市販薬(3・8%)は6倍に増加した。

 年代別でみると、30代以上は覚醒剤や睡眠薬・抗不安薬が最多なのに対し、10代では市販薬が68・4%、20代でも市販薬が35・3%といずれも最多だった。10代では「覚醒剤」や「大麻」はいずれも10%に満たなかった。

 Q どうしてODをするのか?

 A 家庭での虐待、学校や職場になじめないといった「生きづらさ」が背景にあると考えられている。21年から22年に救急医療機関に市販薬のODで搬送された患者を対象にした埼玉医科大などの調査では、ODの目的は「自傷・自殺目的」が7割超で最多だった。「自傷」のなかには、「いなくなってしまいたい」「自らを罰したい、傷つけたい」などの意見もあった。

 「その他」の目的には、「元気を出したい」「いやなことを忘れたかった」「楽になりたかった」「薬をたくさん飲みたくなってしまう」など、現実から逃れたい気持ちや、薬に頼っている状況があった。

 Q どんな危険性がある?

 A 市販薬は「処方薬に比べ…

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