大リーグ・ドジャースの大谷翔平(30)は、2021年の26が自身最多だった盗塁数を大幅に増やし、史上初の同一シーズン50本塁打、50盗塁(50―50)を成し遂げた。

  • 「メジャーに最も近い男」秋山幸二さんが驚く大谷翔平の異次元ぶり

 スプリント力が上がった一つの要因だと推測されるのが、春季キャンプでトレーニング機器「1080スプリント」を使ってダッシュを繰り返していたことだ。

 腰につけたベルトと、箱形の機器から伸びたワイヤを留め具でつなぐ。ワイヤは釣りの電動リールのような仕組みで、0.1キロ単位で最大30キロまで引っ張る力を調整できる。ワイヤが伸縮した速さから、リアルタイムで走る速度が計測できる。

 この機器はパリ五輪の短距離日本代表の強化合宿でも使用され、通称「テン・エイティー」と呼ばれている。

 人間の走りのメカニズムに詳しい、順大の柳谷登志雄教授(バイオメカニクス)に機器の効用を聞くと、大谷の今季の走塁の進化が見えてきた。

 テン・エイティーの使い方には、後方に置いてワイヤによる負荷をかけながら走る「レジスト(抵抗)」と、前方に置きワイヤに引っ張ってもらいながら走る「アシスト」がある。

 アシストで使うと、自分の最大スピード以上が出てリラックスして足を回転させる感覚を養うことができるという。

 大谷が春季キャンプで取り組んでいたのは、レジストのトレーニングだ。負荷の中で走るため、推進力につながる地面を強く蹴る力をつける効果が期待できるという。

 柳谷教授によると、同じ効果を期待したトレーニングは従来、タイヤやそりをひもでくくって引いたり、ゴムチューブで補助の人に引っ張ってもらったりするやり方だった。ひもがたるむタイミングがあり、安定して負荷をかけ続けられなかった。

 機械制御でワイヤから一定の負荷がかけられるテン・エイティーなら、トレーニングが効果的になる。

 大リーグの動作解析システム「スタット・キャスト」のデータを見ると、たしかに大谷の走塁で進化が著しいのは、地面を蹴りだす強さが直結するスタートの1歩目だ。

 二塁打以上やボテボテの当た…

共有
Exit mobile version