尾形敏幸さん(左)と、サインを手にした信長貴富さん=2025年1月4日、東京都渋谷区、信長さん提供

 新年早々の1月4日、東京の渋谷区文化総合センター大和田さくらホールは満席のにぎわいだった。女声合唱団ゆめの缶詰(相澤直人指揮、京増修史ピアノ)の演奏会である。優れた実力を持つこの合唱団の人気に加え、合唱組曲「風に寄せて」(立原道造作詩、尾形敏幸作曲)の女声版全曲初演への注目の高さがうかがえる。客席には作曲者の尾形先生もお見えになっていて、開演を待つ聴衆の期待の高まりを感じた。

 「風に寄せて」は1982~83年に混声合唱曲として発表された作品で、私が青春期に強く魅了された合唱曲である。この日の演目に拙作もあったのだが、それより何より「風に寄せて」女声版初演をぜひ聴きたいと、早くから予定をカレンダーに書き込んでいた。

 初演はめくるめくときめきにあふれる演奏で、終演後の会場は上気した聴衆でごった返していた。ロビーでは刷り立ての出版譜が展示販売されており、尾形先生によるサイン会の列ができていた。私はその列の末尾にそっと並び、人生2度目のサインをゲットしたのである。

 そう、1度目は今から35年…

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