東日本大震災発生時の釜石市の状況を話す糸日谷美奈子さん=2024年9月7日午前10時59分、千葉市若葉区、杉江隼撮影

 東日本大震災で中学生が小学生の手を引き、避難した全員が助かった「釜石の奇跡」。津波から逃れ、称賛された出来事でも記憶を忘れたかった人がいた。時が流れ、体験を人前で話すようになった元教員が救われたと感じた瞬間とは――。

助かったのに苦しかった

 2011年3月11日、岩手県釜石市鵜住居町の市立釜石東中で理科の教員だった糸日谷(いとひや)美奈子さん(46)は放課後、職員室で生徒たちと談笑していたとき、大きな揺れに襲われた。生徒は駐車場に避難した。その後、糸日谷さんは過呼吸に陥った生徒と一緒に避難した。

 過去に津波被害を受けた釜石市では、防災教育が盛んだった。湾に面した鵜住居地区の小学校と中学校にいた約570人は津波から逃れ、全員無事に避難して「奇跡」と呼ばれた。

 しかし、糸日谷さんは複雑だ…

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