南海トラフ地震をめぐり、「巨大地震注意」の臨時情報が出た1週間。この間の対応をどう受け止め、今後につなげていけばいいのか。高知県など南海トラフ地震が想定される地域の防災にかかわってきた京都大防災研究所の矢守克也教授(防災心理学)に聞いた。
- 南海トラフ臨時情報、どの程度の対応がよいか議論を 福和伸夫さん
これまで、臨時情報の認知度は低い状態でした。私たちも含めた各種調査の傾向は、大まかに「知っている」が2割、「聞いたことがある」が6割、「知らない」が2割で、ほぼ共通していました。
「知っている」と言っても、どのくらいの確率で、どのような対応を取るのかまで理解していた人は少ないでしょう。それが、1回出たことによって広く伝わり、これまでの5年分の発信を上回る効果がありました。
日本中で飲料水やガソリンがなくなるような事態にはならず、数百回に1回の確率で巨大地震が起こるという「巨大地震注意」の情報にふさわしい行動がおおむねとられていたと思います。様々な機関や研究者、メディアによる呼びかけやコミュニケーションが功を奏したという言い方もできるでしょう。
避難所の開設や鉄道の運休、海水浴場の閉鎖など、巨大地震注意のガイドラインよりも踏み込んだケースもみられました。ただ、不慣れで目安もないなか、少し強めの反応が出ることは、ある程度予想していました。
私がかかわっている高知県の黒潮町や四万十町でも避難所が開設されましたが、実際に避難された人は少数だったと聞いています。初めてなので「1回やってみよう」と開けた面もあったでしょう。これくらいの確率ならば、遠くの避難所よりも、近くの安全な場所で過ごすことを選択するなど、将来に向けた学びを得る機会にもなったはずです。
観光客が減っても補償はないなど、マイナス面もありますが、全体としては前向きな効果のほうが目立ったように思います。
ただ、2回目以降になると、情報が出ても反応せずに何もしない方向にいかないか、心配もあります。今回起きたことだけを見るのでなく、違うパターンへの想像力を広げられるかが私たちに問われています。
今回はお盆を控えた時期でし…