リニューアルした2025年版の赤本を手にする編集部マネージャーの中本多恵さんと、赤くなかった時代の「赤本」を手にする上原寿明社長=2024年4月15日午後4時7分、京都市左京区の世界思想社教学社、日比野容子撮影
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 大学入試の過去問を集めた「赤本」が創刊70年を迎え、出版元の世界思想社教学社(京都市左京区)が表紙のデザインをおよそ20年ぶりに変えた。その名の通り、赤色がイメージカラーとして定着してきたが、高校生からは「威圧感があっていかめしい」という声が上がっていたといい、淡いパステルカラーを採り入れたり、文字のフォントを小さくしたりと、大幅にリニューアルした。

 新しい表紙は、赤色を基調としながらも、最上部の鉢巻きの色をミントグリーンにするなど淡いパステルカラーを採り入れた。中央には2025年の「5」を丸くデフォルメしたデザイン。黒字の大学名もフォントを小ぶりにして、柔らかな印象に仕立てた。

 また、数年分の過去問が収容されているために分厚くて、目当てのページが探しにくいという欠点を解消するため、本の小口部分に辞書によくついているようなインデックスをつけた。

高校生の意見を聴いて

 編集部ではデザインを検討する際、利用者の意見を大切にしたいと、花園中学・高校(京都市右京区)を訪れ、高校生十数人に意見を聴いた。赤本の色について「色が鮮やかすぎてプレッシャーを感じる」「志望校が周囲にばれるので、持ち歩くのが恥ずかしい」という声が上がり、「優しい色合いならずっとそばに置いておきたくなる」と提案されたという。

 「色のよしあしは考えたことがなかった。創業者も私も、とにかく書店で目立たなアカンと思ってきた」と上原寿明社長(68)。社員時代に30年にわたり赤本作りに携わってきただけに「『赤本』が赤でなくなると、何の本かわからなくなる」と悩んだが、「読み手の思いは何より大切だ」とリニューアルを決断。赤の地色は守りつつ、若い人たちの感覚を採り入れることにした。

どのようにして赤本が誕生したのでしょうか。記事の後半で明かされます。

最初から「赤」ではなかった

 世界思想社は1948(昭和…

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