惨敗。それでも、28歳の表情は晴れやかだった。
6月30日にあった陸上の日本選手権男子100メートル決勝で、10秒26(向かい風0・2メートル)の5位に終わった桐生祥秀(日本生命)は言った。
「一生懸命走って、負けました」
個人種目でパリ・オリンピック(五輪)の代表になるには五輪参加標準記録(10秒00)を突破して優勝する必要があった。
立ちはだかる壁は高かったが、「すごいわくわくしましたね。こういうの、いいなって。終わった後に『もっと足、速くなれ』って思いましたね」。真剣勝負の場を心から楽しんでいた。
2017年に日本選手初の9…