住民を訪ね、被害状況や体調などを丁寧に聞き取るケアマネジャーの細川貴子さん(右から2人目)ら=2024年3月20日午前10時16分、石川県輪島市
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 「誰も取り残すことなく、支援につなげたい」。そんな思いで、能登半島地震の被災地で暮らす高齢者らの自宅を1軒、1軒、訪問している人たちがいます。輪島市では5月下旬、仮設住宅で1人で暮らす70代女性の「孤独死」が判明し、見守り活動の充実が求められてもいます。在宅の高齢者はどんな暮らしをし、どんな支援を必要としているのでしょうか。

 「きょうの訪問は20軒ほどです。土砂崩れで道路がどうなっているか……。でも、行ってみましょう」

 3月中旬の午前9時、ケアマネジャーの細川貴子さん(48)は車のハンドルを握ると、石川県輪島市の市街地を出発した。

 行き先は、日本海沿いにある人口50人ほどの町。高齢化率は5割を超える。1月1日に起きた能登半島地震の影響で集団避難していた人たちが戻って来たため、在宅高齢者らを訪ね、困りごとや心身の不調がないかなどを把握する。福島県、千葉県から応援に来た、東日本大震災の被災経験があるというケアマネジャー2人も一緒だ。

 石川県が2月に始めた、在宅高齢者らを個別に訪問する「被災高齢者等把握事業」の一環だ。県内外のケアマネジャーや相談支援専門員らが訪問し、状況を聞き取る。厚生労働省の補助事業で、孤立を防止し、早期に必要な支援につなぐのが狙いだ。

 対象としたのは、被害が大きかった珠洲市、輪島市、穴水町、能登町、七尾市の5市町。全国災害ボランティア支援団体ネットワーク、日本介護支援専門員協会、日本相談支援専門員協会などの団体が、実際の活動を担っている。県は、把握した情報を被災者データベースに登録しており、登録者数は約5千人(3月27日時点)という。

 細川さんは輪島市内にある介護事業所に勤めているが、担当する利用者は避難先へ移り、職員の多くも避難していて、通常の業務は休止状態。一方、訪問活動には、ケアマネジャーの専門知識や経験が必要とされていた。

 「避難せずに自宅で暮らし続けている高齢者のなかには、介護サービスを利用せず、行政の目も届いていない人たちがいる。だれも取り残すことなく、早く支援につなげたい」。細川さんは2月から、ほぼ毎日、朝から夕方まで訪問活動に専念している。活動に関わる人たちは、多いときは1日に数十人。数人のチームに分かれて訪問する。細川さんは、その中核としての役割を担う。

 海沿いの町への道には亀裂や隆起が生じ、「通行止め」の表示があちこちに。細川さんはその都度、通行できる道を探しながら進んで行く。倒壊した住宅のなかには、細川さんが担当していた利用者の家も。土砂崩れがあったとみられる道は、車1台が通るのがやっとで、すぐ横は崖だ。「今、地震が起きたらと思うと怖い」と細川さん。

 ふだんの倍近い約30分かけて、目的地の町に着いた。

■食事や介護の状況把握 寝た…

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