実父のいとこにあたる川畑幸治さんと、中原末子さんと抱き合うロブ・シプケンスさん(右)=2024年11月7日午後6時26分、鹿児島県大和村、大久保真紀撮影

 「心の中で欠けていた最後のパズルが埋まった」。アジア・太平洋戦争でインドネシアを占領した日本軍の関係者を父に持つオランダの日系2世ロブ・シプケンスさん(78)は、35年間「私は何者か」と自問してきた。この秋、父の故郷を訪ね、親族と奇跡的に出会うことができた。

 11月7日夕、鹿児島県・奄美大島中部の公民館で、シプケンスさんは笑顔の中心にいた。奄美市在住の中原末子さん(73)が語りかけた。「よく捜してくれた。なんかとても不思議。オランダに親戚がいると思うとうれしい」

 末子さんの兄、川畑幸治さん(76)も「宝くじに当たったみたいだ。涙が出てくる」と話した。

 幸治さんと末子さんは、シプケンスさんの実父のいとこにあたる。夢に見た親族との対面は偶然だった。

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 シプケンスさんが自分の出自を知ったのは、43歳のときだ。きょうだいの中でも自分だけ顔立ちが違うなど違和感をもっていた。ある日、勇気を振り絞って母に実父のことを尋ねた。一度は話すことを拒まれたが、数週間後、事実を明かした。

 戦時中、母の家族はインドネシア・ジャワ島中部のプカロンガンで暮らしていた。日本軍の占領下、祖父は抑留され、現地出身の祖母や母は食堂などで働かされた。

幼いころのロブ・シプケンスさんと母親の写真。母親は昨年12月に98歳で亡くなった=ロブ・シプケンスさん提供

 憲兵に乱暴されそうになった…

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