トランプ氏が再び米大統領に就いた。返り咲きを果たした第47代大統領は、歴代大統領の系譜にどう位置づけられるのか。慶応大名誉教授で慶応義塾ニューヨーク学院長を務めるアメリカ文学者で、2023年刊の大著「アメリカ文学と大統領」(南雲堂)を監修した巽孝之さんに、米国文学史・文化史の観点から見たトランプ氏の位置づけを聞いた。
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物語作者としての大統領と「演劇化」
――米国の文学や文化の歴史から見て大統領とはどんな存在でしょうか
アメリカ大統領はアメリカという国家の象徴であると同時に、大統領という存在そのものが、米国の「文学」や「文化」を構成する主要なモチーフになっています。
歴代大統領は一挙手一投足が注目を集めると同時に、様々なイメージが付与されてきました。文学史・文化史の観点から言えば、大統領は「アメリカ最大の物語作者」であり「新たな物語づくりを試みる挑戦者」です。
初代ジョージ・ワシントンや第2代ジョン・アダムズ、第3代トマス・ジェファーソン、第4代ジェームズ・マディソンらは「建国の父祖たち(Founding Fathers)」と呼ばれます。独立戦争や独立宣言、憲法の起草にかかわり、アメリカ合衆国建国の理念を体現したからです。
次いで、南北戦争や奴隷解放宣言で知られる第16代エイブラハム・リンカーンは「史上最も尊敬される大統領」であり「たたき上げの男(self-made man)」。アメリカ民主主義の価値観を一身に引き受けています。
第35代ジョン・F・ケネディはその若々しさとともに米ソ核戦争が懸念されたキューバ危機や1963年の暗殺事件により記憶されます。
個々の大統領が偉大なイメージを帯びて語られる一方で、後世ではそうしたイメージの書き換えも起きます。ジェファーソンは多数の奴隷を「所有」する農場主であるばかりか、黒人の血を引く女性奴隷サリー・ヘミングスと恋仲になり、子どもまでもうけていたのがDNA鑑定で確かめられています。奴隷制の支持者か、奴隷解放論者か。論争が続いています。
大統領という存在の「演劇化」が起きるのも米国政治・文化の特徴です。リンカーンは1865年、首都ワシントンDCのフォード劇場で観劇中に、希代のシェークスピア俳優ジョン・ウィルクス・ブースの手で狙撃、暗殺されます。最も有名な政治家を最も有名な俳優が撃つ光景を観客全員が目撃してしまった。ほぼ1世紀後のケネディ暗殺も初の日米宇宙中継で衛星放送されましたから、太平洋を挟んだテレビ視聴者全員が目撃し、環太平洋に衝撃が走りました。昨年7月のトランプ氏暗殺未遂事件はネット時代ですから全地球規模です。大統領はメディアを介して現実世界全体を劇場化してしまう存在です。
ストロングマンとタイニーマン
――そうした歴代大統領の系譜にトランプ氏をどう位置づければいいでしょうか
トランプ氏の登場には前史があり、突然出てきたわけではありません。歴代副大統領まで含めると、系譜がたどりやすくなります。
例えば第41代ジョージ・H…