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強制送還される恐れを抱くフアン・カルロスさん=2025年1月21日午後、米テキサス州エルパソ、軽部理人撮影

 高さ5メートルを超える壁が、どこまでも続く。

 メキシコとの国境に位置する、米テキサス州エルパソ近郊。壁を乗り越え、不法に米国への入国を試みる人は見当たらない。兵士の姿もない。

 トランプ大統領は20日の就任初日、不法移民対策だとしてこの地域に「国家非常事態」を宣言した。22日には、米軍兵士1500人の追加派遣を決めた。

 「多いときには移民を次から次へと拘束したが、今は1日に数人ほどだ」。警戒にあたる国境警備隊の男性はそう言った。

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メキシコとを隔てる国境の壁=2025年1月21日午後、米テキサス州エルパソ近郊、軽部理人撮影

 米税関・国境警備局の統計によると、昨年12月にエルパソ周辺で拘束された不法移民は約8600人。最も多かった2022年の同時期と比べて6分の1以下の水準になる。

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 非常事態宣言を出す必要があるのか――。この国境警備隊の男性に尋ねると「取材には応じるなと言われているのだが」と苦笑いしてこう強調した。「我々が存在を知らない秘密トンネルがまだあり、『犯罪者』が入る可能性がある。国境警備は更に力を入れなければならず、宣言は絶対に必要だ」

 エルパソでは9日、隣接する…

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