
東日本大震災の犠牲者への祈りと能登半島地震の復興への願いを組み合わせた企画展が、金沢市の金沢21世紀美術館(21美)で3月4日まで開かれている。中心を担うのは映画やCM制作の一線で活躍する2人。きっかけとなったのは、命日に鳴り響く「追悼の汽笛」だった。
企画展を催す映像制作会社「K-Zone.」(東京)の代表で、映像作家の岸建太朗さん(51)は、東日本大震災から1年となる2012年3月11日、宮城県松島町の港にいた。震災をテーマにした長編映画「母の肖像」の監督として、新卒1年目の録音技師だった落合諒磨さん(36)と一緒だった。
発生時刻の午後2時46分、停泊する船から1分間、一斉に鳴る汽笛の音に合わせ、主人公が港を歩くラストシーンを撮影しようとしていた。人が少なそうな場所を選び、撮影許可を取るなど念入りな準備を進めていた。
新人、言えなかった「やめましょう」
カメラのレールなどを設置し、最終調整していた追悼時刻の約10分前、スタッフが「岸さん、後ろ」と声をかけた。振り向くと、100人以上の住民が集まっていた。祈りを捧げるために来たことは明白だった。
撮り直しはできない。葛藤し…