永井愛梨さん(24)は、自分の経歴をずっと他人には隠してきた。
ずっと向き合えないコンプレックスがあった。
京都府出身。中学校1年の冬、その日に食べた食事を、自宅のトイレではじめて吐いた。
その後、10年近くつづく摂食障害のはじまりだった。
摂食障害は、食事の量や食べ方に問題が起き、心身に影響が出る心の病だ。
国内の患者数は20万人を超えると推定されている。
永井さんは、普段の食事や冷蔵庫の中にある食材を食べて、吐くことが「癖のようになった」。
責任感の強い子どもだった。「親や周囲の期待にこたえないと」。そう思う気持ちは、人一倍強かった。
小学生から塾に通い、中学受験に合格した。
引きこもりの姉がいた。家庭内のけんかに、自身が仲裁役になることが多かった。
食べて、吐いている間は「考えないで済んだ。解放された気持ちになった」。
過食の量や頻度はみるみるうちに増えた。
中学2年生になる前の春に入院し、病院に併設した学校に移った。中学卒業まで入院生活が続いた。
勉強は得意で、高校受験では、志望校の特進コースに合格した。
ただ、自宅に戻り、高校に通い始めると、入院中はおさまっていた過食と嘔吐(おうと)をまた、繰り返すようになった。
同級生や教師にはひた隠しにした。「周りからの見られ方が変わるのが怖かった」
体重が30㌔台になった時期もあった。高校2年生のある朝、ベッドから起き上がれなくなった。
カーテンを閉めた自室のベッドの中で1日を過ごすことが増えた。
「ずっとこのままでいるのか」「人生にわくわくしたことはないのかな」
ひとりで考え、思い浮かんだ…