「あんのこと」主演の河合優実は「この映画を本当に見てほしい人には、届かないかも知れない」と語る。その真意は?
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「私が死んでいて、その人生を誰かが演じることになったら、もう私は何も言えないけれど、最大限の努力で人生を想像して欲しいと願うはずです。その努力を、私はやろうと思いました」
主人公杏(あん)のモデルは朝日新聞の記事に登場した「ハナ(仮名)」。幼少期からの虐待や薬物依存を乗り越え、介護福祉士になる夢が出来た。夜間中学で学ぶはずだったがコロナ禍に前途を阻まれ、2020年春、25歳で命を絶った。
「自分のすぐ隣にこういう女性がいたという事実に、衝撃を受けた」という入江悠監督(「SR サイタマノラッパー」シリーズなど)の脚本を読み、「ハナさんと杏を私が守る」と覚悟した。
21歳の杏は小4から不登校、12歳で母に体を売らされ、覚醒剤漬け。薬物更生者の自助グループを主宰する刑事の多々羅(佐藤二朗)、相談に乗ってくれる記者の桐野(稲垣吾郎)と出会い、初めて希望を知る。母から離れ、介護の仕事も得たがコロナ禍で日常が一変し、自助グループ、職場、学びの場、全ての居場所を失う。
「重く暗くなりそうだけど…