写真・図版
森達也さん=東京・霞ケ関駅、葛谷晋吾撮影

 1995年3月20日、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起きた。ドキュメンタリー映画などを通じてオウム信者の日常を描いてきた森達也さん。日本の「分岐点」となったあの年から30年、社会はどう変わったのか。現場を歩き、考えた。

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 「我々はあのサリン事件を忘れない‼」「ひかりの輪・アレフ反対解散せよ!」

 1月21日、森さんと待ち合わせをして東京都世田谷区にある5階建てのマンションを訪れた。各階にはこんな言葉の書かれた横断幕が掲げられている。オウムから派生した団体「ひかりの輪」の信者が、このマンションの一部を拠点としており、近隣住民たちが、抗議活動を行っているのだ。

 ひかりの輪は、団体規制法の観察処分の対象で、近くには警察や公安調査庁の詰め所もある。この建物周辺だけが、物々しい雰囲気だ。

 「森達也と申しますが、上祐(史浩)さんか、広末さんは、いらっしゃいますか」

 アポなしの取材。森さんがインターホンを押して、言う。ドアを開けたのは、団体で広報・法務の担当をしている広末晃敏副代表だった。

「中に入らせてもらえないですか」

 森さんは、95年のサリン事…

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