青山学院大学の谷口洋幸教授=本人提供

 国連女性差別撤廃委員会による8年ぶりの日本審査が17日、スイスのジュネーブでおこなわれた。日本政府によるジェンダー平等への取り組みを審査し、改善のための勧告を行うものだが、日本は1985年に女性差別撤廃条約には締約したものの、条約の実効性を強めるための選択議定書は批准していない。国際人権法が専門の谷口洋幸・青山学院大学教授は「日本の人権状況は世界の潮流から乗り遅れ、ガラパゴス化している」と指摘する。

 「失われた人権の30年」というべきでしょう。1993年にウィーンであった世界人権会議で人権の普遍性が確認され、同年、国連総会で、政府から独立した国内の人権機関が必要だとするパリ原則が採択されました。その潮流に世界各国が乗っていくなか、日本は乗れませんでした。今も日本国内には独立した人権救済機関はなく、経済と同じく、失われた30年の影響が非常に深刻になっています。

 差別をなくすためにどういった法制度や施策が必要なのか、国はどう動くべきか、具体的な解決策や方針を様々な国を審査してきた専門の委員が提案するのが国連女性差別撤廃委員会の総括所見(勧告)です。国際社会の知恵、人類の英知といえるでしょう。

 日本政府がこうした英知を軽視し、指摘に誠実に向き合ってこなかったこと、選択議定書に批准していないことも、世界各国の男女格差を示すジェンダーギャップ報告書で日本が146カ国中118位と大きく立ち遅れていることに影響しているといえます。日本の人権をめぐる状況のガラパゴス化は強化されています。

 ――日本政府は選択議定書の…

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