My吹部seasons
三重県立白子(しろこ)高校吹奏楽部(同県鈴鹿市)で12月前半まで部長を務めたオーボエ担当・京極穂乃花(3年)には忘れられない経験がある。
2022年の東海マーチングコンテスト。前年から本格的にマーチングに取り組み始めたばかりの白子高は、誰もが大舞台は初めてで、右も左もわからずに浮足立っていた。
「最初にフロアに立ったとき、みんなの立ち位置がずれていて……」
マーチングは30メートル四方のフロアに5メートル間隔で打たれた印を基準にして演奏・演技をおこなうが、白子高の部員たちは最初の立ち位置を間違えて並んでいたのだ。慌てて並び直し、演奏・演技が始まった。
すると、今度はフロアの外周を行進するときにまたポイントを間違え、隊列がぐちゃぐちゃに乱れた。足を前に出す順番が逆になっている者もいた。
そんな悔しい経験から2年――。
白子高は今年、全日本マーチングコンテストに初出場。マーチングの聖地・大阪城ホールで堂々とした演奏や行進を披露した。たった2年間での大躍進だった。
- 【結果】全日本マーチングコンテスト結果
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マーチングに力を入れると…
部員の多くが普通科文化教養(吹奏楽)コースに所属しており、全日本吹奏楽コンクールには過去6回出場している。ただ、12年を最後にコンクールから遠ざかっている。
21年、新顧問として斎田努教諭と大野博史教諭が赴任したころ、良い結果が出せなくても部員たちはあまり悔しそうな顔を見せなかったという。
赴任の年からマーチングに力を入れるよう発案したのは斎田。その効果は大きかったと語る。
「マーチングは生徒たちが自ら積極的に動き、声を掛け合って練習を進めなければなりません。生徒たちの自発的な行動が見えるようになりました」
大野はマーチングによる音楽的な成長を感じた。
「全体的に響きが増しました。特に、金管楽器がよく鳴るようになりましたね」
穂乃花が忘れられないという22年の東海マーチングコンテストは銀賞だった。翌年は初めて金賞を受賞したが、代表に選ばれなかった。部員たちは銀賞が金賞になったことを喜ぶ一方、「代表になれずに悔しい」と言えるようになった。
白子高は着実に変化してきていた。
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【連載】My吹部Seasons
吹奏楽作家のオザワ部長が各地の吹奏楽部を訪ねます。
吹奏楽コンクールで銀賞になって
今年、ドラムメジャー(マー…