テルマエ展の設営作業をするヤマト運輸の美術品輸送専門スタッフ=2024年6月16日、神戸市立博物館

現場へ!  運ぶ(1)

 木製クレート(輸送箱)の板を外していくと、優美な曲線を持つ白い石像が現れた。

 神戸市立博物館で今夏開かれた「テルマエ展」の目玉のひとつ、イタリアのナポリ国立考古学博物館所蔵の「恥じらいのヴィーナス」。5人がかりで台車に移し、展示台に設置していく。

 別の場所では慎重な手つきで指輪を展示台に設置し、粘着テープで展示台のほこりを取り除く。6月中旬、ヤマト運輸の美術品輸送専門スタッフが、東京から展示品を会場に運び込んでいた。

  • 連載「現場へ!」

準備に3カ月 梱包材も手作りで

 それぞれに唯一無二の価値があり、絵画、彫刻、陶磁器など素材も形状もサイズも様々な美術品の輸送には、セキュリティー対策や温湿度管理が求められる。専門的な知識や技術が必要なため、物流大手は専門部署を置く。

 業務は単に美術品を運ぶだけではない。展覧会なら2~3カ月前から各地の所蔵先に赴いて作品のサイズや材質、搬出ルートなどを調べる。その結果をもとに、個々の美術品ごとにクレートや包装材を作る。包装材は真綿を和紙でくるんだものを手作りしたり、ウレタンを組み合わせたりし、クレートは作品のサイズに応じて木材を組み合わせるなどして作る。梱包(こんぽう)した美術品は、空調設備を備え、振動を和らげる対策がされた専用トラックで運び、展覧会の会場では作品の設置まで担う。

 通常なら展示ケース越しなど…

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