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慶大の堀井哲也監督(右)と清原正吾(左奥)

 24日に開かれるプロ野球のドラフト(新人選択)会議で指名を待つ一人が、慶大の内野手・清原正吾だ。西武などで活躍した清原和博さんの長男は、別競技をプレーした中高6年間を経て強豪大学で4番打者に成長した。プロの評価は未知数だが、異色の経歴を持つ大学生野手の足跡には他にない魅力がある。

二つの重荷、問うた覚悟

 慶大野球部の堀井哲也監督(62)は、あの「まっすぐな目」をよく覚えている。

 2020年秋。知人から相談を受けた。「キヨ(清原和博さん)の息子が野球をやりたいと言っている。話を聞いてあげてほしい」

 横浜市の練習場のバックネット裏。当時慶応高3年の清原正吾と立ち話で面談した。聞けば、中学はバレー部、高校はアメフト部。本格的に野球をするのは、軟式野球をしていた小学6年のころ以来だという。

 「二つの重荷がある」と堀井監督は感じた。プロで活躍した大打者の長男として注目されることと、6年間のブランク。そこで、清原にこう問いかけた。

 「覚悟ができているか。4年間頑張れますか?」

 こちらの目をまっすぐ見て、すぐに返事が返ってきた。

 「清原の名前で野球をやる覚悟はできています」

 入学前の練習に、清原はジャージー姿で参加した。守備は少し硬球を怖がっているように見えたが、スローイングの形ができていた。スイング軌道はアッパーでもダウンでもない。センター返しが意識できていた。

 「全体的に変なくせがない。4年間やれば格好がつくな、と思いました。期待、とまではいかないぐらいの感じでしたけどね」

 清原はこの4年後、チームの中心打者へと成長する。プロをめざす選手が集う東京六大学リーグにあって、4年春に一塁手のベストナインを受賞した。

 堀井監督は振り返る。

 「練習での成長曲線は1次関数のようにまっすぐ右肩上がり。ただ、実戦に関しては2次関数のような(徐々に傾きが急になる)曲線です」

ブランクゆえの向上心

 バッティングは実戦経験の数がものを言う。まして清原は150キロの速球も変化球も、打席で経験したことはなかった。

 「バッティング練習で『打た…

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