渡辺恒雄氏=2011年、朝日新聞出版

 年が明けたのに恐縮だが、昨年末の話題を取り上げたい。12月19日、98歳で亡くなった渡辺恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆のことだ。

 個人的なつながりは何もない。ただ、2回取材したことがある。いや、「会話した」あたりが近い表現だろうか。

 最初は、2006年2月8日夜。渡辺氏は東京・大手町の高層ビル最上階にある日本料理店で小泉純一郎首相(当時)と会食した。総理番だった私は、他社の記者とともに店の外で待機していた。

 前日に、宮内庁が秋篠宮妃紀子さまのご懐妊の兆候を発表。これを受けて、小泉氏は会食直前に皇室典範改正案の国会提出見送りを示唆した。小泉氏と渡辺氏のやりとりに注目が集まった。

 1時間半の会食を終え、先に店を出たのは小泉氏。10分後、渡辺氏が現れた。

 「今日は何もしゃべらんぞ」…

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