ロシアから見える世界

 みなさん、こんにちは。先日、ロシアの外交関係者と話をする機会がありました。とても日本の事情に詳しい人物です。そのときに、こんなことを言われました。

 「もしも今、ロシアと日本の間に平和条約があったとしたら、日本は大変だったでしょう。米国に言われて、ロシアに制裁しなければならない。だけどそれだと条約違反になってしまう。頭が痛いことになっていました」

 とても奇妙な発言です。確かにロシアがウクライナ侵略を始めた際、日本は速やかに対ロ制裁に踏みきりました。先日の岸田文雄首相訪米の際に、バイデン米大統領はこれを高く評価しました。

歓迎式典でバイデン米大統領(左)と握手を交わす岸田文雄首相=2024年4月10日、米ワシントン、岩下毅撮影
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 しかし、仮に日本がロシアと平和条約を結んでいたとしても、侵略行為を批判するのは至極あたりまえで、とやかく言われる筋合いはないはずです。

 実はこの外交関係者の発言の背景には、日ロ平和条約を巡る、日本とロシアの根本的な見解の相違があるのです。

 まず、日本の考え方を整理しておきましょう。

 第2次世界大戦が終わって80年が経とうとしているのに、日本とロシア(終戦時はソ連でした)は、まだ平和条約を結んでいません。その原因は、両国間の領土問題が解決していないためです。

 日本は、現在ロシアが実効支配している択捉、国後、歯舞、色丹の四島を「北方領土」と称して、返還を要求しています。

 日本政府は公式には認めていませんが、安倍晋三元首相は2018年11月、4島返還を断念して、歯舞、色丹の2島の引き渡しだけを求めるという譲歩案に転じ、プーチン大統領に示しました。

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日本とは異なるロシアの主張

 4島か2島かはともかく、領…

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