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SBIマネープラザが今年9月から運用を開始した東京・平河町のオフィスビル(中央)。1口100万円で、10口(1千万円)以上から買える「不動産小口信託受益権」として売り出し、約70億円を集めた

 小口に分割された建物の所有権を持つことができる「不動産小口化商品」という投資商品の購入者が増えている。国土交通省によると、同商品への出資額はこの10年で8倍超に急増した。背景には、相続税を節税したいと考える高齢の富裕層の存在がある。どんな仕組みなのか。リスクをどう考えればいいのか。

 東京都墨田区の両国国技館の近くに立つ5階建ての賃貸マンション。都内の80代の女性は昨年、このマンションに設定された「不動産小口化商品」を6千万円分、購入した。

 自分の死後、3人の娘にのしかかる相続税負担を減らすためだ。

 2年前に夫に先立たれ、現金約1億2千万円と、一軒家の自宅を相続した。対策をしなければ、今度は娘たちに多額の相続税がかかると心配し、税理士に相談したところ、勧められたのが不動産小口化商品だった。

 不動産特定共同事業法(不特法)という法律に基づいた、「任意組合型」という仕組みを説明された。どんな仕組みなのか。

 投資対象となる墨田区のマンションの所有権は細かく分割され、計1345口の「持ち分」が設定されていた。1口あたりの金額は100万円。出資したい人たちがマンションを管理・運用する不動産会社との間で「組合契約」を結ぶと、5口(500万円)以上から購入が可能になる。

 女性は出資者となって60口(6千万円分)を購入した。女性がこのマンションに住むわけではなく、全体の約4.5%分の所有権を持つことになる投資商品を買ったにすぎない。

 これがなぜ「節税」につながるのか。

バブル期に登場した不動産投資の手法が、富裕な高齢層の節税需要をつかみ、再び注目を集めています。「タワマン節税封じ」の税制改正も影響しているようです

 相続税を課すにあたって故人…

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