イスラエルがパレスチナ自治区ガザに軍事侵攻して1年。なぜ、ここまで長期化したのでしょうか。イスラエルの国内諜報(ちょうほう)機関シンベトの元幹部で、ライヒマン大学政策戦略研究所の上席研究員のリオル・アッカーマン氏は、そもそも戦闘の背景には、イスラエルのネタニヤフ首相がイスラム組織ハマスのガザ支配を拒まなかったことがあるといいます。どういうことか、聞きました。

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 ――シンベトで、ハマスのメンバーを尋問したことがあると思います。どのような人たちですか。

 指導者層は非常に頭がよく、宗教的で、深い洞察力をもっています。彼らが目指しているのはイスラム国家の樹立であり、ジハード(聖戦)こそが目標を達成する唯一の方法だと信じています。そのメンタリティーを変えることはできないでしょう。ハマスと交渉できる共通理解の土台があると思えません。

 ――なぜ、シンベトは昨年10月7日のハマスの越境攻撃を防げなかったのでしょうか。

 シンベトは年間400から700のテロ攻撃を阻止してきました。パレスチナのほぼすべてを把握できるほどの諜報能力があり、「99.9%の企て」を阻止していると言えます。そんな国は世界を探してもありません。

 昨年10月7日の前にも、シンベトは「何かが起きようとしている」という情報をつかみ、軍に伝えました。ハマスのメンバーたちがガザの中で、10月7日の攻撃でやったようなことを訓練しているというような情報です。ただ、こうした情報は過去にも何度もあり、結果的には何も起こらなかった。軍は「今回も以前と同じだろう」と判断したと聞いています。

「ハマスによるガザ支配」、望んだのはネタニヤフ首相

 ――ハマスはパレスチナ自治政府の主流派組織ファタハと仲たがいし、2007年からガザを実効支配しています。イスラエルはハマスをテロ組織としているのに、なぜ長年にわたって支配を阻止しなかったのですか。

 イスラエルにとって、ハマス…

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