看板メニューのクレープ「塩バターシュガー」と、相性ぴったりのホットコーヒーを手にする藤井千明さん=2025年1月9日、奈良市花芝町、伊藤誠撮影

 近鉄奈良駅(奈良市)近くの花芝商店街で、2021年夏にオープンしたクレープの店「Fajii」(ファジー)。女性客が多く、店主の藤井千明さん(36)は笑顔で接客をしながら一枚一枚クレープを焼くのに大忙しだ。

 でも、開店日は週後半の3日ほど。残りの平日は、店から車で10分ほどのところにある小さな工場で、クッキーを焼いているからだ。

 その工場があるのは観光土産品の卸販売会社「パルメット」(同市東紀寺町2丁目)。夫で社長だった伸行さんが、新規事業として新しいお土産をつくりたいと15年に「奈良公園クッキー」を企画・製造し、奈良市の土産物店やホテルなどで販売した。

 鹿や大仏が描かれたかわいらしいパッケージに、上質のバターの豊かな風味と「添加物不使用」が特徴のクッキー。とくに修学旅行の児童・生徒たちにうけ、売り上げは順調だった。だが、伸行さんは秋の旅行シーズンが一段落した時期の23年12月14日、病気で急逝。44歳の若さだった。

前に進むなら楽しむしかない

 「とにかくショックが大きく…

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