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レモネードを渡し、小児がんへの支援を呼びかける土井颯大さん(左)とかおりさん(左から2人目)=2024年11月10日、大阪市鶴見区
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 秋晴れが広がった昨年11月10日。

 大阪市鶴見区の「TSURUMIこどもホスピス」の広場で、黄色のエプロンを着けた高校1年の土井颯大(そうた)さん(16)=大阪府豊中市=が照れくさそうに呼びかけた。

 「レモネードいかがですかー」

 病気や障害がある兄弟姉妹を持つ「きょうだい児」への理解を深めてもらう活動。颯大さんには8年間病気と闘ってきた弟の大地さん(13)がいた。

 大地さんは2016年12月、小児がんの一種「神経芽腫」を発症した。保育園に通う5歳だった。

 颯大さんは小学2年の8歳。「弟が死んでしまうかもしれない」。泣きじゃくった記憶が残る。

 抗がん剤、移植、腫瘍(しゅよう)の摘出手術、放射線、治験。大地さんは副作用に耐えながら治療に励んだ。

 そのたびに母かおりさん(43)が付き添い、颯大さんはお見舞いに通った。

 颯大さんが「思ったより元気やん」と話しかけると、「お兄ちゃんが来てくれたから」と答えた。

 「太陽」のような弟だった。

 大地さんは17年12月、1年の治療を経て退院した。

 翌年には小学校に入学し、サッカーや体操に汗を流し、鬼ごっこで公園を走り回った。

 家族3人で「当たり前の幸せ」をかみしめた。

兄に募った「罪悪感」

 3年半が経った21年6月…

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