北海道の基幹産業の一つである観光はコロナ禍で大きな打撃を受けた。最南端の松前町で旅館を営み、最先端半導体の国産化をめざす「ラピダス」進出を契機とした地域経済の活性化や効果の波及などを話し合う北海道の有識者懇話会にも参加する工藤夏子さん(51)に政治に求めることを聞いた。
北海道の観光
北海道観光局の調査によると、コロナ禍前の2018年度の観光入り込み客数は外国人を含めて計5520万人だったが、コロナ下の20~21年度は外国人がゼロとなり計3千万人台に急落。23年度は5月のコロナ5類移行により計4777万人にまで回復した。
「旅館業にとってコロナ禍は大変厳しい時期でした。その一方で気づきもありました。それは旅館は地域を支えるインフラでもあるということです。私が住み、商売をしている松前町は道南の中心である函館市からも車で約2時間かかります。医療関係者、道路や電気などの工事関係者は他の地域から来る。そうした地域を守ってくれる人たちが泊まる場所を提供するため、旅館を休業したのは最初の緊急事態宣言があった2020年のゴールデンウィークだけでした」
危険伴う道路 50年変わらず
「松前のような端っこの地域で必要最低限なことは、安全な道路の確保と、携帯電話やインターネットなどで情報が確実に届くことです。道路について言えば、母も私も出産の際、陣痛に耐えながら車で沿岸や山間部の道路を通って函館の病院へ行きました。その道路は大雨が降ると土砂崩れなどの危険があるため、しばしば通行止めになり、新聞すら届かない。地元がずっと安全な道路を求めているのに、この50年間何も変わりませんでした」
「高齢化で働く世代の人口が…