溶岩流、火砕流、火山灰……。あらゆる噴火の種類があり、「噴火のデパート」と言われる国内最高峰の富士山。昨年、ふもとの住民10万人超の命を守るための避難基本計画が改定された。鍵を握るのは「分散」「徒歩」といった避難手順の周知だ。
富士山は、噴火によって地形を大きく変えてきた活火山だ。「宝永噴火」(1707年)では16日間にわたり噴火を続け、江戸にも火山灰を降らせた。以降噴火は確認されていないものの、過去5600年の間に約180回の噴火が確認されており、今も噴火の可能性がある。
火口近くは「車」で避難
「富士山で噴火警戒レベル3が発表されました。避難対象エリアにお住まいの方は直ちに避難して下さい」
7月19日、富士山頂から南東に14キロの静岡県富士市の勢子辻(せこつじ)地区に防災無線が鳴り響いた。住民24人の集落の避難訓練だ。噴火前の「噴火警戒レベル3(入山規制)」が発表された段階で、事前避難が呼びかけられる。
自主防災会長の川村周司さん(73)は、要介護の人を車いすに乗せる訓練もして県道を車で下り、20分ほどで避難所へ。速やかな避難にも「本番はどうなるかわからない」と川村さんの危機感は強い。
噴火後では遅くなるため、住民の防災意識も高い。この地区は市内で唯一、火口が出現する可能性がある「第1次避難対象エリア」。数百度のマグマ、巨大な噴石、時速100キロ超の高熱の火砕流などが襲う可能性がある。
一方、新たな火口が見つかり、防災の見直しを迫られる地域もある。山梨県富士吉田市の上吉田地区では、2013年に新たな火口が確認された。地区に住む椙浦強さん(71)は「噴火口ではないかという話は昔からあったが、いざ指定されたときにはびっくりした」。地区には転入者も多く、改めて周知する必要があるという。
富士山の火山防災を巡っては…